カヴァレリア・ルスティカーナ
おそらく16歳からの12年間の中で、何度も思い出す音楽がある。
カヴァレリア・ルスティカーナの、間奏曲。
出会った時のことは覚えてないけど、きっと吹奏楽部の演奏会の演目候補の1つだったのだろう。演奏はしなかったけど。
毎日聞くほどではないけど、ふとした瞬間に思い出す。あの曲、何て名前だっけ。メロディーは分かるのに、曲名が出てこないから検索できない。片っ端からクラシックの名曲を聞いて、ようやく曲名がわかる。そんなことを数えきれないくらい繰り返している。
今日は、今までの人生の中で1番死にたい夜だった。
この2日間、仕事に行くことができていない。
給料泥棒、職場のお荷物、迷惑ばかりかける厄介者。
職場の環境は決して悪くない。むしろ人間関係はとても良好だ。でも、私は仕事に行くことができない。とんでもないポンコツ人間だ。
2日家から出ていなかったけど、食料がなくなったからコンビニに行くことにした。こんな時でも腹は減るのだ。こんな人間をクズと言わずになんと言えばよいのか。
いつも行くコンビニには何となく行きたくなくて、行ったことのないコンビニに行くことにした。GoogleMapを頼りにして、夜道の中、アホ毛をそのままにして、すっぴんで歩く。こんな状態でも捨てきれない恥じらいが心底憎かった。
コンビニで思いつくままに買い物をして、濃いめのハイボールを飲みながら1人歩く。
その時、ふとカヴァレリア・ルスティカーナが聞きたくなった。
YouTubeで動画を探して、イヤホンで聞きながら夜道を歩く。ハイボールを缶のまま飲みながら。涙が出てきそうで出ない、苦しい感じが続く。泣きたい。泣けない。
今夜のことは忘れないようにしたいと思う。
何もかもが嫌になって、周囲の目を気にせずにハイボールを飲みながら歩いた夜を。
きっと今日以上につらい日もあると思う。そういう夜に、またカヴァレリア・ルスティカーナを検索するんだと思う。